[1182]  かをり
04/03 16:28
『花は蝶を招き 蝶は花を訪ねる』 そのD最終話

 “あれっ?”熊野はいつの間にか薄暗いベッドの上で横になって居た。ガウンも着ている。(さっきのあれは夢だったのか?)「お目覚めになりましたか?」ふと気が付くと、すぐ足元のベッドの右淵にかおりさんが横向きに座って居た。『かおりさん…どうして此処へ?』「失礼かと存じ上げたのですが…随分とお疲れのご様子で“お風呂で寝入ってしまった”と使いの者達に伺い、少し心配になり、先程様子を見に参りました。」ああ、やっぱりさっきの出来事は夢ではなかった様だ、寝てしまったのは少し残念だった気がするな。気のせいか、少し涙で濡れている様なその虚ろな瞳に熊野はまた魅入ってしまった。…

 白いレースのカーテンで仕切られたベッドにちょこっと腰を掛け、黒くて薄い金の刺繍の入ったランジェリー…いや、羽衣を身に纏ったその姿は、まさしくクモの巣に掛かった“アゲハ蝶”の様であった。いや、クモの巣に掛かったのは俺の方なのかも知れないが…「目が醒めて本当に良かったですわ。もし、このまま目が覚めなかったら、私し、もうどうしようかと…」かおりさんは優しく俺の右腕に左手を添えると、そのまま崩れるように倒れ込んで来た。俺は一瞬、どうして良いかわから無かったが、そっと両手を広げ、かおりさんを優しく包み込むように抱きしめた。かおりはそれに呼応するかの様に、顔をゆっくり近づけ、少し涙?で濡れた瞳を閉じた。そしてどちらもとも無く、接吻を交わし強く抱きしめ合った。

 細く華奢なその身体は、あまり強く抱きしめると何だか壊れてしまいそうだった。裾の黒いレースの付いたガーターと下着の間に観える太腿が、月夜の光に照らされ、青白く艶かしく浮き上がって居た。俺の胸元には柔らかな胸が乗っかり、黒いベールに包まれた胸の谷間が垣間見えた。かおりは首筋から耳元にキスをしながら、脚を俺の身体に巻き付けて来た。まるでクリムトの“蛇”が巻きついて来るかのように…髪の毛で少し隠れて見えた顔が、僅かに微笑んだ気がした。かおりの体温は冷たかった。>心が温かいからか?ベタだな。そして“冷たい身体を温めて欲しい”と言っているように、俺の身体を跨いだまま上半身を起こし、着ているランジェリーの紐を解き肩から落とした。かおりの上下の黒い下着には赤いバラの刺繍が咲いて居た。俺も着て居たガウンを脱いだ。

赤いバラの刺繍の入ったブラジャーとタンガ、ガーターだけの姿のかおりの身体は意外と肉付きが良かった。これを丁度良いと言わず、なんと言おうか。左手で前髪を掻きあげるその姿に、俺の背筋に“ゾクッ”とするような稲妻が走った。かおりはまた俺の方に身体に倒しこむと、さっきとは明らかに違う、激しいキスをして来た。舌を這わせ、貪るように。>さっきとはまるで別人?のようだった。俺の舌がかおりの口の中に吸い込まれて行く…抗うことの出来ない、闇の中に引き込まれて行くようだ。かおりのとろける様な舌が口の中から出て行くと、籠から出されたを小動物のように、顎、首筋、鎖骨から乳頭、そして下腹部の方へと走って行く、そして少し身体を脇にずらし、左手で愛おしむかのように俺の物を優しく包み込んでくれた。

かおりの舌が目的地に到着した。最初は優しく亀頭の周りや外周、堀の部分をぐるりとお散歩して、一旦下に降りるとまた上に登ってくる…ゆっくりと、時には早く。左手で優しく扱きながら、時に指先が鯉の口元を弄り回す。右手はしっかりと嚢の根元を絞めていた。蛇に噛まれないよう鎌首を締め付けているような感じだった。その内にかおりは喉の奥まで大きく吸い込むと、むせる様な勢いで吸い込み始めた。かおりの唾液と吸い込みの激しさで、危うく”昇天”しそうになったが、察したのか一旦勢いを止め、口から離すとこちらを見上げ、かおりは少し嬉しそうに俺の顔を覗き込んだ。「気持ち…いい?」『ああ、すごく気持ち良いよ、もう少しで昇天しそうになっちゃったよ。』

かおりは少し意地悪そうに八重歯を見せて微笑むと、両手を後に廻してブラを外し、“ここから後は貴方がやって”と言わんばかりに俺に身を委ねた。俺はかおりの両肩から紐を腕に滑らせ、ブラを外すと両手で胸を揉みしだいた。薄く開いた目で挑発?しながらかおりはタンガの横の右の紐を外し、左太腿に引っ掛けると、後はガーターと黒いストッキングだけの姿となった。そのまま腰を落とし込み、左手で後の穴を広げ、右手で位置を確かめながら迷宮の奥へとゆっくり誘って行った。(キ、キツイ…すごく締め付けられる。)潤滑油が馴染むと、かおりは俺の上で身体を弓なりに仰け反り、後ろ手で俺の両脚をしっかり掴んだまま、激しく腰を振って来た。

 かおりが時折魅せる、眉間に皺を寄せ薄目でこちらを見下ろすその表情が、俺は溜まらなく“好き”だった…“いつまでもずっとこうして居たい”と本気で思った程だ。“俺はズルズルと深い穴…いや洞窟の中に潜って行っているのだろうか?”
  
 その洞窟は中に入れば入るほど狭くなり、何故か後には戻れない様な気がした。熊野はふと、さっきの“クモと蝶”の話を思い出した。もしかしたら、クモの巣に掛かった“振り”をしたアゲハ蝶が、寄って来たクモを襲う…
           
             なんてことは無いだろう。
          
           蝶は花を訪ねる ものなのだから。

                  完

イイネ!(2) PC
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