[1188]  くまさん🐻
04/06 01:44
くまさんのお友達

前編「泣きべそをかいた香織ちゃん」

 春が来てまもないころ、くまさんは森で大きな山芋を掘り当てました。
それはそれは見事な大きさでそれがあれば冬の間お腹を空かしたくまさんもお腹いっぱい食べられるほどでした。

でも、香織ちゃんもお腹を空かしていると心配したくまさんは、その山芋を香織ちゃんに届けてあげようと思いました。
森をぬけ、山をおりて途中何度か休みながら香織ちゃんの家につくと、玄関の前にそっと山芋を置いてそのままくまさんは帰りにつきました。

お腹の空いていたくまさんは行くときも大変でしたが帰りはもっと大変で、少し歩いては休み、また少し歩いては休みながらようやく森の住処にたどり着き、
さらさらと流れる小川で水を飲むとそのまま疲れて眠ってしまいました。

空腹のせいで何日か眠ってしまったくまさんに、外から誰か声をかける者がいました。

 「くまさん、くまさん、いつまでも寝てないで起きておいで、おいしい食べ物が届いてるよ」

くまさんの住処の入り口で声をかけたのは鹿のおかあさんでした。

 「ああ、おはよう鹿のお母さん、食べ物が届いてるってその籠がそうなの、いったいどうして?」

まだぼんやりしていたくまさんも、鹿のお母さんの足元にある籠の中のパンや果物を見て目が覚めたようです。

 「これはね今日の朝、小川のところで子供たちと草芽を食べてたらホーホーってフクロウが呼びつけるのさ」

 「森の番人のフクロウさんが?」

 「ああ、それで何だろうと思ってフクロウの呼ぶ方に行ったら、森の入り口付近で小さな女の子が座り込んでてね、
  背中に大きな籠をしょってくたびれ果てた顔で泣きべそをかいてたんだ。
  こんなところに一人でいると道に迷って大変だよって言ったら、くまさんの家に行きたいって言うんだ。
  なんでもお礼に籠の食べ物を届けるつもりだったらしいよ。」

 「ええ、そんなことがあったんだ」

 「ああ、だからあたしは言ったんだ、くまさんの家は遠くて帰りは暗くなってしまうからあたしが届けてやろうってね、
  そしたら女の子は泣き止んでうれしそうに笑うから、あたしはその子を背中に乗せて町の入り口まで送ってやったのさ。
  この籠はその子からの贈り物だよ。」

 「そうだったんだ、鹿のお母さんありがとう」

 「その子がくまさんと言ったからピンと来たのさ、それはいつもくまさんが言ってた香織ちゃんだなってね」

 「そうか、たった一人で届けに来てくれたんだね」

 「ああ、くまさん良かったね、あんたお腹が空いてたんだろ、ここは魚が上ってくるような大きな川もないしね。 
  じゃあ、あたしらはそこら辺の草でも食べて帰るからね、さよなら」

 「ありがとう、さよなら」

こうしてくまさんは香織ちゃんの届けてくれたパンや果物のおかげでお腹いっぱいになりました。

でも、わざわざ届けてくれた香織ちゃんにありがとうを伝えたいくまさんは困りました。
何もプレゼントするものもなく、どうしようと今度はくまさんが枯れ木の上に座り込んで悩みはじめたのです。



イイネ!(1) PC ZefMWATJ
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