[1231]  かおり
04/19 16:52
       かおりとくまさんのものがたり”

 わたしが初めてくまさんと出会ったのは、ちょうど、こんな春のポカポカ陽気の時でした。おとうさん、おかあさんに連れられ、近くの河原に遊びに行った時のことです。おとうさんは「よし!今日は大量だぞっ!」といいながら魚つりに夢中でしたが、まだ一匹も連れていません。おかあさんと私は「クスクスッ」笑いながら、すぐ近くの森のそばのお花畑でお花を摘んでいました。

 キレイなお花がたくさん咲いていて、「まったく、お父さんはいつもああなんだから。」といいながらお花をバスケットに入れていました。すると、そこに一匹のモンシロチョウが飛んで来ました。『あ、チョウチョさんだっ!』私はその蝶を追いかけました。追っても追っても、右へ、左へ、上へ、下へと逃げて追いつけません。「かおりっ!あまり遠くへ言ってはダメよっ!」『はぁ〜い♪』

 わたしは追いかけるのが夢中で、いつしか森の中へと入って行ってしまいました。『あれ〜?チョウチョさん、どこ行っちゃったんだろぅ…』あたりを見回すと、いつの間にか薄暗い森が広がって居ました。お花畑の方を見るとおかあさんが見えました。(まだ、大丈夫!)『あぁ、いたいた!』木漏れ日の漏れる、木の枝に蝶が居ました。そおっと近ついて、捕まえようとしたら、“フワッ”とまた逃げてしまいました。

 わたしは草を掻き分け、倒木を除けながら、さらに森の奥へと進んで行きました。と、その時”ガサッ、ガサッ…”と葉っぱが踏み分けられる音がして、そちらの方を振り向くと…見たこともない大きな“犬”が居ました。いえ…それは”犬”ではなく”オオカミ”でした。「ふんっ、人間の子供か?腹の足しにもなりゃしねえけど、3時のおやつ位にはなるかな?」そのオオカミは“のっし、のっし”と真っ直ぐこちらに向かって来ました。わたしは”恐怖”で足がすくみ、声を上げることも出来ません。 

 もう、お花畑も見えませんでした。“おとうさん、おかあさん…助けて!”まさにそのオオカミが襲いかかろうとしたその瞬間、もっと大きな黒くて毛むくじゃらのものがオオカミとわたしの前に立ちはだかったのです。「なにしやがるんでぇ!俺の獲物だぜっ!」大きな黒い毛むくじゃらの…が言いました。「人間の子供に手を出してはいけないよ、それは自然界の掟なんだ。」「ふざけんな!やつらが勝手に森に入って来たのが悪いのさ、さっさとそこをどけっ!」

 オオカミは鼻にしわを寄せ、鋭い牙を”ギラリ!”と見せ付けました。大きな黒い毛むくじゃらのが、両手を大きく広げ仁王立ちしました。すると、オオカミは高く飛び上がり、大きな黒いの肩に噛み付きました。黒いものはわたしを守る為、上手く戦えないようでした。しかし、大きな“爪”で肩のハエ?を振り払うように叩くと、オオカミは近くの“どんぐりの木”に叩きつかり、“パラパラ”とどんぐりの実が沢山落ちて来ました。オオカミは「畜生!覚えてやがれっ!」と”クン、クン”泣きながら逃げて行きました。

 大きな黒いけむくじゃらのものが、「お嬢ちゃん、こんな森の奥まで来ちゃあ、ダメだよ。」はじめてこちらを向いた時、そこには優しい顔をした”くまさん”が立ってました。「ほら、森の出口までオブっててあげよう!」わたしは「くまさんお背中に乗せられました。温かくてフカフカでとても気持ちの良いベッドのようでした。『あっ、肩から血が出てるよっ!』「うん、これくらい大丈夫っ!」“恐怖と疲れ”でわたしはいつしか眠ってしまいました。

 「かおりっ、かおりっ!どうしたの?そんなところで寝て、風邪引くわよ!」おかあさんの声で目が覚めると、わたしはお花畑で寝ていました。「だから、あんまり遠くへ行っちゃダメだって言ったでしょ?ほら、おとうさんの処にもどるよ。」『あれ〜?わたし…夢みてたのかな〜?』気が付くと私のエプロンのポッケには、沢山の“どんぐりの実”が入って居ました。

   『やっぱり、あれは夢じゃなかったんだぁ…ありがとう!くまさん…』

イイネ!(23) PC
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