[1245]  かおり?
04/25 04:28
くまさんとかおりちゃんのものがたり

[番外編]かおりの母、美里のものがたり(前編)

「かおりっ!、かおり〜?どこにいるの?…ご飯よ、早く降りてらっしゃい!…やだ、あの子ったら、また森にでも遊びに行ったのね…まったく、しょうがない子。」

 かおりの母、美里は都会生まれの都会育ち。地元の大学を出て、そのまま不動産会社に就職した…だが、働いてる内に世の中の裏の世界、汚い部分に嫌気が差し、当時付き合ってた、彼(お父さん)と知り合い、彼の実家である、今住んでいる田舎へと移り住んだのである。

 美里がかおりの部屋を片付けていると、ベッドの脇に見かけたことのある、クマさんのぬいぐるみがあった。「あら、このぬいぐるみ…?まさかね…」美里は確かめるようにクマさんの右足の裏を見てみるとるとM&K≠ニ言うイニシャルがあった。

 「何でこれがここにあるのかしら?」…それは昔、おとうさんと、まだ引っ越し先を探していた頃、清流の里≠ニ呼ばれるこの場所を、下見に来ていた時のことだった。「こんな田舎で本当にいいのか?」「うん、こういう場所に住むのが夢だったの。」

 まだ、結婚したばかりの彼(お父さん)と家を建てるために土地を探していた。「ホントにここって、いい場所ね〜何だかすごく落ち着くわ〜♪」『なんだよ、何日かしたら、嫌になって都会に帰りたくなるんじゃないの?」「そんなことないわ…多分ねっ!」「あっはっは、ま、いっか。」 

 たわいもない会話をしながら、山道を歩いていると、1匹の小グマが、木漏れ日の下にたたずんでいた。「まぁ、可愛いいっ!こんなところで独りでどうしたの?」そのクマちゃんは泣いているようであった。『お母さんが、死んじゃったの…僕、これで一人ぼっちになっちゃった…』

 それを気の毒に思った美里は、リュックの中からクマのぬいぐるみをそのくまちゃんに手渡し「ほら、お友達だよ。これで寂しくないでしょ?」そう言うと美里はまだ、小さなくまちゃんと、ぬいぐるみを強く抱きしめた。

 そのくまちゃんはわん、わん!≠ニ泣きながら、美里に抱きついた。美里はそのぬいぐるみとくまちゃんを、しっかりと、そしてきつく抱きしめてあげた。「寂しかったのね…可哀想に…いいのよ、好きなだけ、沢山泣いて…」

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