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くまさん🐻
01/04 22:09
(ひまつぶしの為のぐだぐだショートストーリー)
「アロンアゲイン」
@
「どうもごちそうさまでした。」
「こちらこそありがとうございました、今年もよろしくお願いしておきます」
そんな会話をしながら3人組の客が帰っていったあとは、10坪ほどの店内には香織一人だけになった。
古いビルの2階の小さなコーヒーショップ、店もやはり古いが改装する予定はないらしい。
いや、金がないのだ。
コーヒーを焙煎する焦げた匂いがあふれた板張りの店内には、テーブル席以外に5席のカウンターがあり、調理台が近い右端の席が香織の指定席だった。
その席のカウンター越しの正面にはクロムメッキに輝くアナログ式のエスプレッソマシンがあり、40センチほどの丸い筒状のボイラーに、自分の顔が写っているのを香織は先ほどからぼんやりと眺めていた。
「フレンチトースト食べないの?冷めるよ」
「マスター、あたし一人になっちゃった」
香織の不意の言葉にマスターは一瞬動作が止まり、その後香織の方を振り返りその顔をじっと見つめた。
「そうだね、お客さんたち帰ったからね、でもすぐ別のお客さんが来るんじゃないかな。」
香織の言葉の意味はすぐにわかった、3年以上の付き合い・・店主とお客の関係だが・・ゆえに店内の話ではないのだ、しかし意気地のない心が話をずらす。
「そんなことじゃなくて・・・・・」
最後の方は聞き取れなかった、最後まで言わずに香織は横顔を見せて窓の景色に見入った。ほおづえをついて。
Aにつづく
イイネ!(23) PC ZefMWATJ
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