[739]  くまさん🐻
01/05 22:33
(ひまつぶしの為のぐだぐだショートストーリー)

「アロンアゲイン」 全5回+1・・・(汗)
B
 あの日、香織が何故一人になったのか、その理由を聞くこともせず、また香織も言わずに帰っていった。
 そんな日が過ぎて2週間ほどたったとき、香織から電話が入った。
次の店休日でもある日曜に、駅近くのホテルに迎えに来てくれという、妹の結婚式の帰りにコーヒーを飲みたいらしい。
「でも香織さん、俺、スクーターしか持ってないですよ、一応二人は乗れることは乗れますけど・・」
それで構わないといい、ヘルメットだけ頼むとさっさと電話を切った。
”香織さんって案外とせっかちなのかな”
ひとりごちたマスターは、明日にでも香織のためのヘルメットを買いに行こうと決めると、スクーターも少しは掃除をせねばと思った。

 日曜日、その日は朝から雲ひとつない冬とは思えない爽快な青空が広がっていた、こんな日はつい空を仰ぎ見てのびをしたくなるのを抑えられないマスターだった。
ひととおり伸びで気持ちをリラックスさせると、ホテルに迎えに行くことで頭の中はいっぱいで、先日のアンニュイな出来事はなかったかのようにウキウキした気分だった。
それもそのはずで、香織に好意を持っていることはとうに見抜かれているが、店の外で二人きりで会うなど一切なかったのだ。
さらに、この2週間の間、香織のことばかりが頭に浮かんで落ちつくこともできなかった。
そのもやもやした気持ちが、香織の顔を見ることで一掃されるのを期待しているのだ。

 結婚式は午前中に終わり、披露宴が昼食時間に合わせて始まるらしい。
香織に昼過ぎと指定されたが、遅くなるのもまずいと思い、彼は真新しい赤いヘルメットを座席横のフックに掛けると、買ったころは真っ白だっただろうと思われる自分のヘルメットをかぶり、じわりと駅方面に向かって出発した。

Cにつづく

イイネ!(24) PC ZefMWATJ
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