[740]
くまさん🐻
01/05 22:41
(ひまつぶしの為のぐだぐだショートストーリー)
「アロンアゲイン」 5回+1(ずびばせん🙇)
C
休日で渋滞もなく、マスターのスクーターはおおよそ30分ほどでそのホテルに到着した。昼までにはまだ30分ほどある、昼過ぎということだから、もしかしたら1時間くらい待たされるかもしれないと覚悟を決めた。
角が丸みを帯びたホテルビル入り口には、どこかのデパートのようにライオンが飾られてあった。しかも両脇に2匹、その前に四角のゲートがあるので、まるで鳥居と狛犬である。
ホテルに面した歩道の車道側にスクーターを止めると、何をするでもなくスクーターに乗ったまま、ヘルメットもつけたまま、片側2車線の中山道を流れる車を眺めて時間をつぶすことにした。
時間を持て余すと思っていたが、結婚式が案外と多いらしく、ホテルへ出入りする派手な服装の人たちを眺めているだけでも面白かった。
やがて昼も過ぎ、しばらくするとホテルから出てくる派手な人たちがパラリパラリと増えてきた。
”この人たちが香織さんの妹さんの結婚式に参加してたんじゃないのかな”
ホテルから出てくる人たちは2次会でも行くのか、狛犬のライオン周辺でたむろして各々でグループに分かれておしゃべりしている。
と、そこへ明らかに雰囲気の違う一人の男性、いや男装の麗人が颯爽とホテルから出てきたのだ、一瞬宝塚の星組か月組のスターかと見紛うその人こそが香織だった。
空気のレベルが違うと思った、結婚式に参加する女性の服装はほぼスカートで女性を強調するようなフェミニンなものが多い気がする、髪の飾りもそうだ。
だが、香織は黒のパンツスーツに白っぽい刺繍の入った濃紺のベストだ、胸のポケットチーフとネクタイの替わりに飾った首のスカーフはお揃いのデザインで数ヶ所に赤い色が見えた。長いブラウンの髪をなびかせたその姿はゴージャスというよりまさにスターの雰囲気である、回りの人たちも挨拶は交わしても、近寄って会話しようとする人はなかった。いわば遠巻きにして憧れの視線を送っている、そんな状況がホテル入り口に出現したのだ。
あっけにとられて見ているだけだったマスターにつかつかと近づくと、
「お待たせ、だいぶ待たせたかしら、どうしたの?ヘルメットは?」
その声に目が覚めたように、大慌てでヘルメットを外すと、香織に差し出した。
「ありがとう、あら、新品ね、お金つかわせちゃったみたい」
そういって、ふふと軽く笑うと赤いぴかぴかのヘルメットで長い髪を覆った。
誘うでもなく香織はさっさと後ろの席に跨ると、横に突っ立っていたマスターに言った。
「店に戻るまえに、そばでも食べましょ、407号に入って北に行ってくれる」
「え?北?あぁ、了解」
宝塚のスターがホテル前にいた古ぼけたスクーターに赤いヘルメットをつけて乗ったのだ。回りの注意と視線をひかないはずがなかった。
ホテルの前にいた数十人の視線を浴びて、スクーターはポロポロと軽快な音とともに北に向けて走り出した。
Dにつづく
(長すぎてゴメン)
イイネ!(24)
PC
ZefMWATJ
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