[774]  香織
01/12 13:50
『黒い車…』

香織のRX−7(FC3S)は多少だが弄ってあった。エアーフロー(クリーナー)にブローオフバルブ、機械式VVCとリミッター・カットは自分で取り付けた。足回りはダウンサイジングした、BBSリムにシュトロゼック製ホイ-ルとF205/60/15とR225/55/15のPOTENZA RE71。マフラーはナイト・スポーツのオールステン。メーター読みで250km出ているはず。東北道でBMW M3に最高速で勝ったからだ。

今日の目的地は”いろは坂”…
『トイレ、トイレっと。』以前、付き合ってた“彼”と良く遊びに来て居た。ただ走りに来て居ただけだが、別にそれが懐かしくて来た訳じゃ無い…でも、思い出さないと言えば嘘になる。『上のロープ・ウエイまで我慢して行っちゃおうかっ?』早く履き替えたい。あたしは伝線したストキングと、女々しい男は大嫌いだった。

大谷川の橋を渡り、信号を左折して暫く行くと、猿が良く出ると言う休憩所を左に見て、大回りの左カーブを過ぎると、いろは坂の”上り線”だった。ココからは対向車も来ない。少し、荒っぽくアクセルを開けると“キュイーンッ”と言うタービン音が心地よく響く。ふと、目先のコーナーでテールライトが流れた。“セブン?いや新型のMR2かなっ?”

あたしはギアを3速から2速に落とすと、”プシュンッ!”と言うブロー・オフの音を合図にアクセルを吹き込んだ。”ブフォーッ!”ツインのマフラーから低い唸り声が聞こえる。『コイツ、速っ!』何故かストレートで引き離されて行く。確か、タイプSが2000ccのターボで245馬力、ポテンシャルはそんなに変わらないはず。

条件は一緒のはずなのに、コーナーで追いついても、直ぐに出口の立ち上がりで引き離されて行く。(突っ込み過ぎなのかな?)路面も最悪、段差が在り過ぎて、パワーを掛けると4輪がバタついて本来のトレースが出来ない!『…足周り?それとも、あたしの腕かしら?』もう、膝の伝線など忘れていた。

とうとう追いつけず、ロープウエイに辿り着いてしまった。黒いMR2は、パーキングには寄らず、取り残された私をあざ笑うかのように、颯爽と走り抜けて行ってしまった。(顔ぐらい、拝みたかったのに…)あたしは売店の傍に車を停めると、ターボ・タイマーを5分にセットし、替えのストをバックに押し込み、車を降りてトイレに向かった。

(続く…かな?)


イイネ!(24) PC
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