[975]  くまさん🐻
02/11 12:41
日の出氏へのオマージュとして

二次小説   原作 日の出和彦 「淫美の宴」より

 "合鍵" 

その二

 彼の部屋に入ると、その太い指のついた手のひらであたしの頬をピシャピシャと軽くびんたする、するとあたしの中で抵抗する気力がなくなってすべてを任せ、支配されるよろこびに浸りだす。

 「こっちに来い」

ごく普通の語り口でわざと荒々しい言葉をあたしに吐き出してくる。
リビングのとなりのさして広くない部屋に腕を引かれ、置いてあるベッドの際に立たせると、

 「ブラウスとスカートを脱ぎな」

 「はい」

素直な返事を返して、あたしはブラウスのボタンを外しにかかる。自分はベッドの端に腰をかけ、あたしの足をさも大事な宝物を愛でるようにさわりだす。

 「いつ見てもぞくぞくするような足をしてるよな」

ありがとうと言いそうになるが、服従しているあたしは何も言わずにブラウスとスカートを脱ぎ捨てる。
この部屋に来る目的は"セックス"そのことだけなのだ、だから部屋に入った時からプレイは始まっていた。
ふとももから腰にかけて両手をすべらせると、体を抱き寄せ、例の太い指であたしのあごをちょいと持ち上げる。

 「今日も愛してやるぜ」

 「ぜひお願いするわ」

キザな言葉を交わすと、上向いたあたしの顔に自分の顔をおおい被せて濃厚な口付けであたしをしびれさす。
分厚い舌を器用に動かして、あたしの口の中を探検し始める。そして、あたしの舌を思いっきり吸いだした。

 「あぐぅぅ」

つい口からうめき声がもれた、舌の痛みが脳のある部分を刺激して快感につなげてしまう。
あたしの息も彼の息も荒くなり始め、彼の体温が上がっていくのがわかった。

彼は片手であたしの腕を上げさせると、隙をみせるあたしの脇にそのまま顔をうずめていく。
くすぐったい気持ちはすぐに強烈なしびれを呼び起こす、これだけで頭がへんになりそうだった。
あわせて彼の手は、下着姿のあたしの体をなでまわして最後に足の付け根でぴたりと止まり、パンティ越しに下から掻き上げるように刺激してきた。

 「うぅむむ・・」

勃起はすでにしていたが、その行為があたしの先からヌメヌネとした液体を漏らすのを止められなくなってしまった。

そんな快楽の日々がいつのまにか消えていた。



 彼、日の出和彦と出会ったのは今と同じ夕刻の美しい夕焼けに染まった公園が最初だった。
出会いを求めるいわゆる発展場としての公園ではなく、住宅街によくある子供がよろこびそうな公園だった。

その町に来たのはデザイナーがその町に住んでいたからで、ブティックを経営する香織は有望なデザイナーとみれば、どんなところにも直接出かけて当人と話を進めてきたのだ。

仕事の話が一段落し、ほっと気を緩めたさきにコスモスが一面に咲き乱れた公園をみて、そこで休憩していく気になったのだ。
近所の人たちの手入れがいいのか、コスモス以外にもダリアやパンジーなどさまざまな色彩にあふれていて、香織のつかれた心を充分に癒してくれた。

彼が声をかけてきたのはそんな時だった、香織は花のせいで少し気持ちが華やいでいたかもしれない。

 「ほぉ、綺麗な公園にはきれいな女性がいるんだな」

日の出和彦の言葉はぶしつけではあったが、元より都会のビジネスマンであるから本人の雰囲気は柔らかい。

 「なにをしてるの?」 「きれいな髪だなぁ」

自分が言いたいことをさっさと口にするが、その間も香織の目をじっとみつめたままだった。
悪い気はしない香織は、微笑んで彼に付き合った。

相手に警戒感を抱かせさせない営業マンとしての手練だろうか、香織は彼が求めてきた手を振りほどかなかった自分の気持ちが分からなかったが、それでも構わないと思った。
その時、彼の行為を許した理由は、

 「暮れゆく秋の夕日がすごく美しかったから」

今なら笑い転げそうな話だが、その時はそれこそが素敵な理由だと思えていたのだ。
その美しい夕焼けに照らされた誰もいない公園で初対面の彼の口付けを受けた。熱くて柑橘類の匂いのするキスだった。

その日はキスだけで別れたせいか、もっと会いたいと香織の心も体も動き出していた。
自宅アパートへの誘いに断ることもなく素直にしたがい、当然のこととして他人じゃなくなった彼が言った。

 「これ、ここのアパートの合鍵、香織が好きだから渡しておくな」

女心を喜ばすような言葉を吐いて、彼との関係が始まった。
そして、逢瀬を重ねるたびに、彼の激しい愛撫にもう抵抗する力も理由づけも香織は持っていなかった。

香織は合鍵を持たされたことに喜んだ。
いつも野獣の言葉で荒々しく、そしてその愛撫も激しく執拗であったが、香織も意識が飛ぶほどの快楽を味わったのは初めてだった。すぐに彼に夢中になっていた。

ただ、ポイントを外さないその愛撫に遊び慣れている感じがぬぐえず、時々ひとりで拠り所のない不安にさいなまれていた。
そのふわりとした不安は、ハレの正月が過ぎていよいよ現実となって目の前に現れてきた。





イイネ!(22) PC ZefMWATJ
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