[1065]  くまさん🐻
03/04 20:47
二次小説   美咲香織原作 「いつかの旅の想い出」より

『愛撫』   前編 (香織の "プラトンのエロスと三毛猫マーヤ" との哲学的考察)

 彼のを咥えていて思った、彼のはソーセージほど固くはないけど、熱を帯び、弾力のある感触はなにかに似ている。
で、思い当たったのよね、あれとおんなじ感覚なんだけど、他人に言えないのがまどろっこしいの、あれよあれ。

昨夜来の雨もひな祭りの前日の今朝にはあがり、その雨の夜が十五夜の月だったというから、
今夜は十六夜(いざよい)という実に味のある名前の日だなぁと、ゆで上がったばかりのソーセージのような彼の熱いペニスを咥えながら、香織は考えていた。

 「痛たたっ!」

思わず歯を立ててみたら、やっぱり彼は痛がった。
ベッドで巨大なお腹を上にむけた大の字姿の彼は、まるで昼寝をしているお相撲さんだった。
痛がるお相撲さんは裸の体を起こし、自分のペニスの状態を確かめようと股を覗き込む。

 「あら、ごめんね、つい美味しそうだったから」

「ほんとに食べたら困るよぉ、香織タン」とか言い、苦笑いして香織の頭をなでなですると、また仰向けにひっくり返った。

口で感じるこの何ともいえない柔らかさの魅力は、香織の思考を捕らえて離さない。
「ペニスではないけど、これに似た感触にひきつけられたことがあったなぁ。」それはあれよ、あれ。

つい歯を立てちゃって歯型がついてるかもしれないカリのあたりを、舌でいたわるように舐め回す。

 「う〜む・・・」彼がうなる、快楽の中で大きなお腹を少しばかりゆらして

 「こんなに気持ちいいと我慢できないよ、出してしまうかも・・」

 「大丈夫、この子のこと、あなたよりあたしの方が知って・・・うぐぐ」

快楽の中にいる彼は、あたしの言葉をさえぎるように頭を両手ではさむと自分の股間に押し付け、普段の優しさを捨て去って荒々しさを露わにしだした、別にきらいじゃないけどね。

セックスとは、性欲を発散させるための単なる動物的欲望の行為、とかなんとか言った人がいたっけ。
もうすぐ絶頂をむかえようとする人間の頭は、理性などよりもはるかに根っこにある行動をとるみたい。

そんなこと考えていたら、頭を挟み込んだ彼の手に力が入り、股間に激しく押し当てたまま「うぅっ・・」と声を出した、と思うとさらに

「だめ、いく!」

息苦しさとこみ上げてくる嗚咽の中に、ぬるりとした液体があたしの咽喉の奥に飛び込んできた。
ややしょっぱい味のする液体はすぐに例の青臭い匂いを鼻腔いっぱいに充満させると、あたしはたまらず顔を引き離した。

口の中のザーメンをティッシュに取り出すと、テーブルにあった春限定の桜色の缶ビールの飲みかけを咽喉に流し込んだ。
ふぅ〜っと息をつくと、ベッドには激しい興奮の中で恍惚とした彼が口を開け、息なのか声なのか判別しかねる音が聞こえる。 「う〜、ぐぐぐ〜」

 「早々と逝っちゃったなぁ、久しぶりで溜まってたのかな」

そんなあたしの呼びかけにも答えず、お相撲さんのペニスだけがヒクヒクとうごめいている。
テラテラと光る彼のペニスをじっとながめているうちに、「ごめん」と言った感じで頭を垂れ、やがて恥ずかしそうに小さくなり始めてしまった。

 「あらあら、ちょっと早すぎるけどかわいい坊やもお休みだわ、そうね、疲れてたから少し寝た方がいいかもね。」

いたわりの言葉なのかあきらめなのか、香織自身にもよくわからない、裸のままで転がっている彼の上にバスローブを掛けると、ベッドから降りてガウンを羽織り、窓辺まで行ってカーテンを開けてみた。

日の色はもううすれきって、目の前の植え込みの竹の影からは早くも黄昏が広がろうとするらしい。
西の方から布団をかぶせるようにして忍び寄る雲の端は、関東平野のすでに半分も隠していようか。

この赤城山のホテルから見える関東平野の美しい夜景も、十六夜の月も今夜は期待できそうにないとあきらめた。
ホテルからの眺めは諦めたが、香織自身の欲望は結局放置されたままになって、いよいよその興奮の先をどこに持っていこうかと思い巡らす。

彼のペニスの感覚、あれよ、あれ、あのことでも話してたら気も紛れるかも。
と、いっぱい引っ張ってみたけど、実はこの感覚を持ってるあいつには負けつづけているあたしなのよね。

窓ガラスについた水滴を指先でいじりながら、もう片方の手で自分の愛らしい胸のふくらみをそっと包んでみた香織だった。






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