[1074]  くまさん🐻
03/06 23:49
二次小説   美咲香織原作 「いつかの旅の想い出」より

『愛撫』   後編  (香織の "プラトンのエロスと三毛猫マーヤ" との哲学的考察)

 セックスで取り残され、火照った体を持て余したあたしは、バッグから引っ張り出した肌色のディルドを咥えると唾液で充分に湿らせた。 そして、ベッドで寝ている彼の足元に行くとガウンを肩からするりと落とし、上下白の薔薇柄レース下着に、バックシームの付いた白のガーターストッキング姿でベッドに腰かけた。

やはり彼の生と違いすぎてディルドは固い、あのぷにっとした感触がない。

 「でもいいの、今はあの人と一緒になって果ててみたいから。」

腰を少し浮かし、ショーツをずらすと濡れたディルドを体の奥にあてがい、じわりと体を落としていく。
皮膚に触れた感覚が全身を粟立たせる、そして快楽の期待に胸打つ音が聞こえてくる気がした。

 「あたしの自慢の髪に顔を埋めていいわよ、そして思いっきりあたしの匂いをかいでね。」

夢想の相手に言葉をかけながら、自らの言葉の底に落ちて酔いしれていった。
快楽の穴がミリミリと音をたてて唾液で濡れたディルドを飲み込んでいく、同時に頭の頂上までしびれが走る。


 
 約一ヶ月ぶりに会ったと思ったら自分だけさっさとイって、後は高イビキで寝てしまった彼。
疲れているみたいだから仕方ないんだけど、でもやっぱり取り残された自分が切なくなる。

昨日の寒い夜に2時間もかけて体のメンテナンスをしたのはなんのため、誰のため。
柔肌とはいわないけど、この透き通るようなスベスベ肌の熱き血潮に触れもせで・・・と言いたい。

与謝野晶子の旦那は人生哲学を語って寂しからずやだけど、ここは彼が眠ってしまってあたしが寂しい。
人生哲学と言えば、かのプラトン先生は純愛の少年愛こそが最高とか? 

プラトンの「饗宴」とか気取った本は、飲み会での下ネタばりばりの少年愛の恋話。
プラトン的愛、つまりプラトニックラブって、肉体関係のないことだとしたら、今夜のあたしだわ。
で、プラトン先生、全然最高じゃないんですけど。

でも、純愛である程度満足していた人がいた、まさにプラトニックラブで。
そう、あのあれよ、あたしがあれのせいで負けたあれよ。


 「今度遊びに来たときに、何か作ってくれないか、小魚を使った料理なんか酒のアテにいいんだよな。」

彼にそう頼まれたが、小魚といえども生魚を本格的に料理したことがなかったあたしは、オイルサーデンの缶詰を利用した三品を持って、アパートの二階にある彼の部屋に行った。

オイルサーデンとじゃがいものソテー、サーデンとトマトのマリネ、サーデンの梅と大葉ディップ。
みんなお酒にぴったりだと思った。 しかし、あたしの苦労の割には彼はあまり喜ばなかった。
料理と焼酎の載ったテーブルに差し向かいに座ると、もうひとりの女が「にゃあ」とひと鳴きして顔を見せた。

 「あら、三毛猫じゃない、飼ってたの?」

 「ああ、いつのまにかどこからか転がり込んできてさ、そのまま居ついてしまって、まぁいいやってんで、マーヤって名づけたんだ。」

二階ということもあって、おおらかな彼はベランダのガラス戸を少し開けたままで出勤することが多かった。
しかし、このマーヤはあたしにとって「まぁいいや」って言う訳にはいかなかったのだ。

マーヤはさっそく鼻をヒクヒクさせてテーブルに前足をかけ、首を伸ばすようにして料理を品定めしだした。
彼がそんなマーヤを抱きかかえて自分の膝に乗せると、おもむろにマリネのサーデンを指で掴み、自分の口の中に入れた。
食べたと思ったら違った、魚に染み込んだマリネの液をチュパチュパと吸っただけで、魚自身は口から出して
「マーヤ、マーヤ」といちいち呼びかけてからマーヤに与えている。
マーヤよりも彼の方がうれしそうに見える、まるで自分の赤子に与えてるようで。マーヤはそれを目をしばたかせながら食べている。

彼は次も同じように魚の液をチュパチュパと吸い、そしてマーヤに与える、次も同じ、さらに次も、そしてとうとうマリネの魚をマーヤにやり尽くすと、皿に残ったトマトだけでちびりちびりと杯を傾けている。
マーヤがさらに欲しがり、彼の口のまわりを舐め始めると、「あ、きたね」とか言いながらやっぱりうれしそうにしている。

 「なるほどね、あなたが喜ばなかった理由がわかったわ、ソテーもディップも魚はつぶしてるし、
 おまけに猫や犬には良くない玉ねぎが入ってるわで、そういうことだったのね。」

 「なに、なにを言ってるの、なんのこと。」

 「あたしは猫のエサを作らされていたんだってことに気がついたの、朝早くからそれは猫のためじゃん。」

あたしが文句を言ってるあいだ、彼はマーヤを抱きかかえて、その手足をもてあそんでいる。
そう、これこれ、これがあたしが負けた原因だわ、あたしが彼のペニスで楽しんでいるように、彼は猫の肉球でそのぷにぷに感を楽しんでいたのだ。

一ヶ月近く離れていても以前ほど「会いたい、会いたくてしょうがない」なんて言わなくなっていた。
マーヤとの同棲が彼の気持ちを変えさせたんだわ、その猫に対する純愛のせいだとはっきり言える。
プラトン先生のプラトニックラブ説が正解かと思ったら、マーヤはメス猫ですって。


 ベッドの上の彼は相変わらずイビキの中に眠りこけていた。
腰かけて夢想している香織の正面には窓があり、カーテンの開いているガラスに宵闇と同時にぼんやりと自分の姿が映し出されてきた。

部屋の明かりで照らされた自分の体は白くて、ガラスに月光菩薩が現れたかのようである。
卑猥なことをやっていても、その姿は「美しい」と思った。
そして、左手に持ったディルドの動きをはやめると、夢想の相手に呼びかけた。

 「あぁ、あたしの顔をぺろぺろ舐めて、お願い、顔だけでなくてどこでも舐めて・・あたしも舐めてあげる。」

もう片方の手で自分のそそり立ったものをしごく、ディルドの動きに合わせて。
激しい動きのせいでブラジャーのストラップがずり落ち、肩の肌が強調され白い素肌が夜気にさらけ出されると、いよいよ妖艶さで頭も体すべてもがおおわれてくる。

ベッドの彼は何も知らず、夢の中でマーヤの肉球と遊んでいるに違いない。
その足元で夢想する香織の眉間にシワが寄り、息遣いが荒くなってきた。

 「ああ、まだよ、まだ・・もっともっと愛撫して・・お願い・・。」

そう言いながら、ディルドを持った手はさらに激しい動きをみせて、あたしの全身の力を硬直させ、のけぞらせるのに充分だった。

 「ああイキそう、ああだめ、だめだわ、噛んで、お願い噛んで・・。」

ディルドの手を離し、乳首を思いっきりつまみあげた、と同時に痙攣の中に熱いペニスが白い液体を吐き出していた。
そして、あたしの意識は消えた。

どれだけの時間が過ぎたのか分からない、ふと気がついたが、部屋の景色には何も変化がなかった。
ベッドに顔から倒れこんでいたのはわかった、そしてひとつだけ違っていた光景があった。
それは、彼の丸いお腹の上に、香織が吐き出した白い液体が光っていたことである。
その光を見てしずかに思った。

 「あなたのぷにぷにペニスを卒業したかもしれないわ、あたしにはもう猫より大きな相手がいるんだもの。」

落ちていたガウンをもう一度羽織り、満足そうなため息をつくとカーテンを開け外を覗き込んでみた。
窓の外は闇の中に雲が切れ、そのすきまに北極星の煌めきが香織に微笑んでいるように見えた。

(チャンチャン)




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